逆転しない正義~あんぱん~

たまたま持ってた生姜がコレだった。

正直、主人公を素直に崇にすべきだったと思うぐらい勿体ないというか、流石に前作より遙かに面白かったし盛り上がったけど木村屋のアンパン食わせるつもりが山崎の蒸しパンとかサラダパンとか混じってね?って感じ。いや朝田のぶ視点で柳井崇を見守り続けるというのなら解らんこともないけど格段そう言う訳じゃ無いし、逆に崇視点の愛するのぶの物語がシックリくる流れだった気がする。

戦中に愛国少女化していくのはありだし其れに違和感を感じるのもありだけど逆転していく正義を目の当たりにしてそこから逆転しない正義を目指すのならそこをしっかり、例えヒールになったとしてもやらないとなんのために生まれてきたの?ってのぶ自身の決心に繋がらないと思うんだが。

その点は『エール』が傑作だった。軍歌、高揚歌で有頂天になった裕一が戦場の惨劇を目の当たりにして半狂乱になったり、戦後もそんな自分を許せずに苦しみ続けて『もう自分を許しげあげて!』と音にすがりつかれてようやく立ち直る。そう言うエッセンスがまるでなかった。軍国少女が学校の先生として戦争に荷担して空襲に遭って自分の正義が崩れたから先生を辞めたってそれだけかよ。自分の正義が崩れただけで自分自身の戦争に荷担した心が壊された訳じゃない。

じゃあその正義を探すのかと言えばそう言うことも無く全部成り行きでのぶの物語は続けられる。子供のためにという主幹はあるけどそれに拘って生きていくと言うほど押しも強く見えなかった。そういう成り行きで雑誌編集部時代と政治家秘書時代が過ぎていくけど拘りが強い訳じゃないのでなんとなく務めてなんとなく子供押しという感じ。速記もカメラも教師経験もさほど役に立っていたような描写がほとんどない。その挙げ句が『私は何者にもなれなかった』ってそりゃそうだろ。何者になろうと苦労した痕跡がないんだもの。

ただコレが崇視点での物語になると結構面白い。闇雲だけどひたすらに走るのぶに対して見向かれなくてもひたすら恋い焦がれる崇の物語だとしたら大成功。要領もわるく自信のない崇が時代に揉まれ戦場で九死に一生を得て帰ってきて平和の世の中になってようやく一歩ずつ自分の夢に進んでいく。挫折や嫉妬、プライド、焦りもありながらのぶに支えられて自信を付けていく。自分では気がつかなかった才能が他の所で開花していく様は面白かったし史実通り。紆余曲折の結果のあんぱんまんもどんどんアップグレードしてそれが崇やのぶの人生の痕跡そのものだったった物語なら良かったというか何故そうしなかったかと。

もうひとつ、逆転しない正義とは飢えた人に身を裂いても食べ物を与えることとと言うのならそう言うシチュエーションをのぶ側にも用意すべきだったかなと。崇側でも朝田家に残してきたたまご食堂の話が全く出てこなかったのも疑問だなと。結論としては主人公の今田美桜さん自体は悪くないと言うが周りが良すぎて埋没感満載になってしまったかなと。主人公が逆転してどうするんでしょうかねと。